下町の長屋が密集する老朽化した木造住宅とそれに隣接する鉄骨住宅を取り壊して合築をするプロジェクトです。車の通らない路地はこどもにとっても大人にとっても楽しい空間です。路地と建物との関係をどのように作るかが主題となりました。
建物は周辺建物と近接する密集地に建築されるので、室内でのバーティカル方向へ彩光が要求されます。屋上まで続く周り階段を下階まで彩光が届けられるようストリップ構造としました。そして仕上げを鉄骨どぶ漬加工とすることで、仕上げ表面を照らす光のリフレクションを期待しました。もう一方は直線ストリップ階段として光の透過と同時に、木造の柔らかいマテリアルで下のステージとなる空間に閉塞感がなくなるよう配慮しています。
外観は1階と2階のボリュームを外壁素材の違いで明解にさせました。路地に面してホリゾントの軸線が強調されたのは、元の長屋の連続感をトレースした効果です。また、路地と室内が今までの長屋以上にアクティブな関係作りを生み出せるよう大きな開口部を設けました。そして、その開口部廻りの細部が、目立たない存在として納めることができるよう慎重にデザインをしています。アルミサッシ、上部庇と外壁水切り金物。それから後日にDIY工事で取り付けられる格子引戸の金物をL型と逆L型の金物の組み合わせにより、擾々たるディテールにならないようシンプリファイにデザインしています。
戦前木造長屋から室内温熱改善を図り外断熱を採用した為、室内側は鉄骨構造を露出させた建築物の素朴な表現を実現できました。しかし現場において、基礎廻りや床、壁と梁の関係における細部で断熱の納まりに工夫が必要とされ、断熱遮熱塗料との併用で外断熱を完成させています。
なんでもない建物の建替えプロジェクトではありません。木造密集地での老朽家屋建て替え計画として、細部までの拘りにより路地が建物に大きな建築的有効性を与え、そして可能性を示唆させた実験的な取り組みとなりました。
基本計画設計:近畿大学寺川研究室∔フーシャアーキテクツ 工務店:森下工務店 写真撮影:福澤昭嘉




