大阪の郊外にある旧農家を地域のお年寄りや子どもたちに開放するため改修を行いました。建物は農家から専用住宅として改修が重ねられ今日まで使われてきました。近年、家主の未利用が続いた後、地域の資源として再活用されました。
農家らしい間取りの大きな田の字プランに、浴室の増築や土間の小部屋化が時代や住まい方に応じて、その都度改修が行われてきました。建物は北側にある北摂山系を背にして、南に大きな開口を設けられた配置です。その窓側にある縁側を隔て居室が庭に対面するプランとなっています。北側には日中も薄暗く湿気の感じる台所と浴室が増築されてありました。その部分は減築し、敷地境界からゆとりある空間を生み出すことにしました。そうすることで田の字居室に山側から通り抜ける風を確保し、どこにいても光や風を感じられるプランとなります。中間期には冷暖房費用の節減に努められるよう環境にも配慮をした計画としました。田の字プランは建具で仕切られた大きな空間が魅力的です。このメリットを活かせるよう、しなやかな構造躯体となるよう耐震補修計画をしています。耐力壁は在来の土壁をコアとして配置させながら、周辺に格子耐力壁を設置し、空間が閉鎖的にならないよう風や光が通る空間を実現させました。格子組は針葉樹の45角を捻子に組んだ相欠接ぎとし、今回耐力壁として構造設計者や大工と開発したものです。菱に転んだ捻子組が陰影のシャープな格子面を浮き立たせ、武骨な農家の柱梁組とのコントラストを明快にしています。
幾多の変遷には魅力を感じる経年変化があり、味わいがあるものです。そして農家であるがゆえの材料が存在します。土や瓦や使われた古材など味わいがり温かみのあるマテリアルを壊さず、細部のあらたなデザインでも手の垢を残すことにしました。マテリアの使い方に工夫を重ねて、未来の変化に繋いでいけるよう建物を作っています。







