気仙沼市内湾地区の共同化事業による復興まちづくり

気仙沼市内湾地区は産業基幹である生鮮カツオをはじめ、サンマ、メカジキ、サメも多く水揚げされる屈指の水産都市であり、もっとも、古くから賑わいのある、「屋号通り」「昭和モダン」と呼ばれる港町繁華街の雰囲気により歴史ある街並みを形成していた。東日本大震災による大津波とその後の大規模な火災により死者・行方不明者1,277名、被災世帯9,500戸という甚大な被害を受けた。被災翌年にまちづくり協議会が立ち上げられ、円滑な復興を求めた地権者らを中心に土地を集約換地し、先行街区としてまとめられた四地区(南町二丁目地区を含む)が、共同化事業による復興まちづくりとして進められた。

南町二丁目地区での建築概要

南町二丁目地区では、商いと住まいの遊食住の街並みによる賑わい復興を目的とした共同店舗と公営住宅による共同化施設を中心に、土地区画整理事業と一体となり、隣接する個別再建店舗と連続性のある商店街(南町紫神社前商店街)として街区整備を行っている。共同化事業は、気仙沼復興商店南町紫市場(仮設商店街)をはじめとした内湾地区の再建を希望する被災営業者により設立した建設組合が事業施行者となり、復興事業に協力を得た地権者からの借地を集約換地した敷地に、共同店舗24区画と災害公営住宅24戸を建設した。公営住宅部分は、災害公営住宅公募買取事業により、整備後に気仙沼市へ譲渡した。

パティオ(広場)を中心に、パティオと一体となって賑わい交流の拠点となる集会室「cadocco」と店舗を1階に配した5階建て公営住宅棟と2階建て共同店舗棟により構成し、パティオへとつながる路地空間が広がりや変化のある賑わい空間を作っている。外部からのアプローチには、オープンテラスやエントランスホールを計画し、2階の眺望デッキや公営住宅の廊下にも繋がる散策路になると同時に建物全体に回遊性を持たせている。また2階にある公営住宅では単身世帯住戸を計画し、生活環境が共用部に繋がれるよう配慮されている。内湾地区の復興のアイコンとなるよう願いを込め、潮風を感じるデッキ全体に船の帆をイメージした膜構造屋根をシンボライズした。

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