下町に残る洋館付き長屋住宅(大阪市西淀川区姫里)

洋館付き長屋住宅が残る西淀川は、明治時代以降には工業地域として、大きな工場から中小規模の工場まで広く立地し、そこで働く人たちの家屋が整備され下町の生活が営まれてきました。1950年代以降の高度経済成長で世界的にも驚異的な成長を遂げた時代の国内需要を下支えをした地域です。その結果、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染などの環境公害に見舞われてきたました。近年では、工場の移転が相次ぎ、跡地にたくさんの新しいマンションが建ち、子育て層の人口が増えています。また、大阪では珍しいイスラム礼拝堂があり、外国にルーツのある人々もたくさん住んでいます。人情味あふれる下町であると同時に、多様な人々が集う住宅地でもあります。洋館付き長屋はそうした中、生活する人の利便性に併せて改修を繰り返され、この地に長年息づいてきたのです。

今回の改修では、環境や公害について学ぶセミナーハウスとして利用されるほか、研修・講演やゼミ合宿に利用できるようプログラムされています。また、コミュニティカフェを併設しゲストハウス利用者の他、近隣の人たちのたまり場として機能するよう計画されています。3軒長屋の2軒を一体的な空間利用していることで2軒分の合わさった中庭があり、開放的で明るい部屋が保たれています。中庭の廻廊を縁側として、接待室と客室やカフェが中庭に面する気持ちの良い間取りとしています。カフェには、耐震シェルタを設置し、建物全体の耐震性能とは別に万一の場合に備えた安全な箱型空間を作っています。正面壁はモルタルドイツ壁とハーフティンバー風を施し、腰壁は下見板張りとして、洋館付きらしい魅力ある意匠を特徴とした長屋住宅を計画しました。歴史を継承した長屋の魅力が町の魅力として再生をされました。

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